エスパー石鍛冶というデッキを使い始めて(競技レベルのレガシーをするようになって)もうすぐ1年という月日が経とうとしている。
 MTGの恩師であるストーンフォー次郎さんにこのデッキを教えてもらい、始めは大会に出向いてはサンドバックになりながらも、次第に勝ち方を体で覚えそのデッキの魅力に取り憑かれていった。

 去年のGP京都では秘密を掘り下げる者を強く意識したフォー次郎さん謹製のエスパー石鍛冶が初日全勝の快挙を飾った。私自身その型を使わせていただいたのだが、使用感はとても良かった。
 GP京都後、時を越えた探索が禁止になり、今日のエスパー石鍛冶の型が誕生した。青白石鍛冶デッキのメインアタッカーというと真の名の宿敵が挙げられることがほとんどであるが、その枠に黄金牙、タシグルが採用されている。タシグルはForce of Willのコストに使用できないものの、「探査によるコストの軽さ・火力で死ににくい・アドバンテージが稼げる」などの利点があり、非常に小回りの利くカードとして採用された。ほとんどのマッチアップでサイドアウトされることはなく活躍してくれる(複数枚Karakasを採用しているデッキは除く)。このタシグル採用型は不毛の大地世界のるつぼによる土地攻めにも対応しており、それまで難敵だったデッキにも耐性が上がっている。そう、タシグル型は現レガシー環境に対するスマートなソリューションである。

 GP千葉でのフィーチャーマッチの多くが”ある”デッキだった。それは「奇跡デッキ」である。師範の占い独楽相殺でロックしつつ、盤面を終末のような奇跡呪文でひっくり返し、天使への願い僧院の導師精神を刻む者、ジェイスでゲームを決めるという今のレガシー環境を定義しているデッキである。基本的に青白で構成されている奇跡デッキは赤をタッチすることで青いデッキへの耐性向上や、その他赤色の万能カードを採用でき、非常に盤石である。この奇跡デッキの存在がエスパー石鍛冶の存在を揺るがす。それも僧院の導師の登場以降より奇跡デッキはあらゆるフェアデッキに対して有利となった。ゆっくりとゲームプランを組んでくるはずの奇跡がふいに物凄い火力で殴り掛かってくるのだから。しかも独楽相殺のロックがこちらの呪文の解決をほぼ許してくれることがないままそんな状況が発生する。相殺をカウンターしようものなら赤1マナで紅蓮破赤霊破がそれを許してくれないだろう。時が経つにつれ、奇跡デッキはますますその存在感を示している。先日開かれたエターナルパーティー2016でも奇跡デッキの使用率が非常に高くTOP8への進出も果たしていた。今のレガシー環境において奇跡デッキはありふれた存在で、しかも非常に強力なデッキであることはわかっている。「じゃあ勝ちたいなら奇跡使えばいいじゃん。」違うそうではない。それでは「フォーマット:レガシー」ではなく、「フォーマット:奇跡」になってしまう。
 なにも奇跡デッキの存在が悪と言っているわけではない。奇跡以外のデッキで、奇跡に不利がついてしまうデッキを使おうとするなら、従来環境を席巻しているコンボ・テンポ・ビート・コントロールに目を向けつつ、奇跡デッキに対する意識を高めていかなければ上位入賞は難しいということである。

 私はGP千葉にタシグル型のエスパー石鍛冶を持ち込んだ。結果は4-4-1という惨憺たる結果だった(うち2勝はBye)。4敗のうち2敗が奇跡デッキだった。GP本番までいろんなサイドプランや戦法を練り、本番では最終的に納得したプランで挑んだ。それでもまるで歯が立たなかったというのが率直な感想だった。1番エスパー石鍛冶で勝った方の話を聞くと、その人は自分とは違った戦法をとっていた。サイド後、ハンデスを抜くかそうではないかという話だったのだが、私は抜くプランを採用し、その方は抜かないプランをずっと取っていたそうだ。まずは戦法面で一点改善の余地を見つけた。次にデッキの構築面である。


土地:23
汚染された三角州×4
溢れかえる岸辺×4
湿地の干潟×1
島×2
平地×1
沼×1
Tundra×3
Underground Sea×2
Scrubland×1
不毛の大地×2
忍び寄るタール坑×1
Karakas×1

クリーチャー:8
黄金牙、タシグル×2
石鍛冶の神秘家×4
瞬唱の魔道士×2

スペル:29
Force of Will×4
渦まく知識×4
思案×2
呪文貫き×1
対抗呪文×1
剣を鍬に×4
思考囲い×3
コジレックの審問×1
議会の採決×1
未練ある魂×2
仕組まれた爆薬×1
梅澤の十手×1
殴打頭蓋×1
精神を刻む者、ジェイス×3

サイドボード:15
至高の評決×1
概念泥棒×1
真髄の針×1
饗宴と飢餓の剣×1
世界のるつぼ×1
外科的摘出×2
狼狽の嵐×1
呪文貫き×1
喉首狙い×1
解呪×1
安らかなる眠り×1
聖域の僧院長×1
謙虚×1
石術師、ナヒリ×1


 これはGP千葉で実際に使用したリストである。黄金牙、タシグルは奇跡戦において、Karakasとセットで使うことで非常に活躍するが、基本的には除去の的である。メイン戦は石鍛冶の神秘家で組み立てていくことが多いのだが、サーチ先が梅澤の十手殴打頭蓋なので、多くの場合は後者をサーチする。しかし、後者を選択すると、盤面にクリーチャーが2体並ぶことから、ためらいなく終末で流されることが多い。なのでメインにおける石鍛冶でのゲームの組み立てではやや力不足感がある。未練ある魂はコントロールに非常に強いことで知られているが、最低一回は流されてしまう。だが、これは仕方がない。しかし、2回目以降このカードをキャストするときは独楽相殺で打ち消されてしまうか、僧院の導師のチャンプ要員と化し、以前よりその強さが隠れている。戦線を持ちなおそうとしているうちに独楽相殺が完成してしまい、ロックが決まり始めると、長々と相手がトドメをさしてくれるまでドローゴーが続く(時間次第では石鍛冶側が投了することが多い)。
 このリストは完成されていて、使い心地も良いのだが、奇跡耐性だけが低く感じる。とくに私のようなプレイヤースキルが皆無な人間だと余計にそれを強く感じる。

「私でも使える奇跡を強く意識したかつ丸いエスパー石鍛冶のリストはないものか。」

 エターナルパーティー2016を目前に私はずっとそのことを考えていた。メインから奇跡デッキに有効な装備品カードを採用し、確実にクロックを刻めるようなリストを。すると答えは案外身近にあった。エターナルパーティー2013のストーンフォー次郎さんが優勝された時のリストだ。メインのクリーチャーが真の名の宿敵が3枚、瞬唱の魔道士が3枚、石鍛冶の神秘家が4枚と潔いリストだ。しかもミシュラの工廠まで入っている。装備品のリストに火と氷の剣もある。攻めっ気の強いリストに感じ、前々日からそのリストを元に調整を行った。そしてエターナルパーティーで使用したリストが以下のリストである。


土地:23
汚染された三角州×4
溢れかえる岸辺×4
湿地の干潟×1
島×2
平地×2
沼×1
Tundra×2
Underground Sea×2
Scrubland×1
ミシュラの工廠×2
忍び寄るタール坑×1
Karakas×1

クリーチャー:10
真の名の宿敵×3
石鍛冶の神秘家×4
瞬唱の魔道士×3

スペル:27
Force of Will×4
渦まく知識×4
思案×1
呪文貫き×1
対抗呪文×1
剣を鍬に×4
思考囲い×3
コジレックの審問×1
議会の採決×1
至高の評決×1
仕組まれた爆薬×1
梅澤の十手×1
火と氷の剣×1
殴打頭蓋×1
精神を刻む者、ジェイス×2

サイドボード:15
真髄の針×1
饗宴と飢餓の剣×1
外科的摘出×2
狼狽の嵐×1
否認×1
ヴェンデリオン三人衆×1
基本に帰れ×2
流刑への道×1
解呪×1
安らかなる眠り×1
聖域の僧院長×1
謙虚×1
ゼンディカーの同盟者、ギデオン×1


 クリーチャーの枠はそのままに、細かなスペルや土地配分を自分なりに微調整を行った。至高の評決はサイドボードでも良かったが、デスアンドタックスが流行していることもあり、メインでの採用となった。土地基盤が不毛の大地からミシュラの工廠に変わり、Tundraが1枚平地に変わっている。これはサイドボードの基本に帰れを活かすためでもある。フェッチランドを減らしても追加するプランもあったが、一人回しをしているときに安定性が無く感じたので見送った。未練ある魂を採用しないのはこのリストが初めてだった。対デルバー耐性がやや低めに感じたのでサイドに流刑への道も採用。ヴェンデリオン三人衆は正直メインでも良いように感じたが、今回はサイドに。ゼンディカーの同盟者、ギデオンは今回キャストこそしなかったものの、アドバンテージカードとして、または宿敵の除去耐性の向上に繋がると期待できる。否認呪文貫きよりも確実に相殺精神を刻む者、ジェイスを対処できると考えて。
 結果的に5-1-1(うち1勝は奇跡)という安定感でフィニッシュした。SEに残ることができなかったのが悔やまれるが…。奇跡戦では石鍛冶に剣を付けてクロックを刻むだけで膨大なアドバンテージを稼いでいたという印象だった。石鍛冶が除去されたあとも1体の宿敵が剣を握り、相手に対処を迫っていて良かった。奇跡側も摩耗+損耗を2枚以上サイドインしてくることが多いので装備品3枚体制は有効である。総じて単体の脅威を生み出すことが勝ちに繋がりやすいと感じた試合だった。ミシュラランドも打ち消せないクロックとして活躍した。
 まだこのリストはコンボ戦とデルバー戦を十分にこなせていないので、それらとのデータが欲しいところ。細かい部分の調整もまだまだできると思うので、奇跡デッキの勢いに飲まれぬよう、これからも「エスパー石鍛冶」を研鑽していきたい。


 如何せん自分はまだ本格的にMTGを初めて日が浅いので、多くの方の意見もお待ちしております。もしもこんな実りのあまり無い文章をこの最後の一文まで読んでくださった方がいましたらありがとうございます。
 そしてこんな僕の面倒をずっとみてくれるストーンフォー次郎さんに心からの感謝を。


新規石鍛冶ユーザーの方もチラホラ閲覧していただいてるようなので、以前書いた青白石鍛冶の記事を挙げておきます。すごくざっくりとした説明しか書いてませんが…。
http://www2.hp-ez.com/hp/kindai-mtg/page7/bid-233387

コメント

nophoto
通りすがり
2016年12月12日11:02

こんにちは!
最近レガシーを始めようと思い、丸いデッキが好きなので
石鍛冶を組みましたが、最近の環境での石鍛冶の記事は少なく
とても参考になりました!ありがとうございます


自分が組んだものとすごくリストが近く、
そこで少しお聞きしたいのですが、
自分はメインにネメシス2ヴェンディ1でとってるのですが
サイドの追加の対奇跡枠に、ギデオンを取るかヴェンディをもう一枚取るかで
迷っております...
経験も少なく、どちらが良いのか凄く迷っており、
もしよろしかったらご意見頂けたら嬉しいです!

宅
2016年12月13日1:07

こんにちは。
コメントありがとうございます。

ヴェンデリオンは対奇跡においてメイン戦では強いですが、サイド後ですと奇跡側も紅蓮破や赤霊破で簡単に対処してきます。なのでヴェンデリオン対奇跡戦においてメインでは強く、サイド後は弱くないけど強くないという感じです。
ギデオンは奇跡側が対処しづらく、ゲームを決めることが可能なカードですので、オススメの一枚です。
また真の名の宿敵を採用していて、相手が仕組まれた疫病を採用していたりする場合はサイズを上げることができ、真の名の宿敵が腐らなくなる等のメリットもあります。僕の場合ですと、妄信的迫害の採用を見送っていることもあり、ギデオンを採用しているという部分もあります。
ヴェンデリオンメイン1サイド1は奇跡側が採用していることもある構成で決して弱くはないのですが、石鍛冶はもともと丸いデッキなので、サイドも丸くしすぎるとどうしても勝ちにくくなってしまいます。
石鍛冶デッキはレガシーの面白さがふんだんに詰まったデッキですので、勝つまで慣れも必要ですが、恒久的に楽しめる良いデッキですよ。
頑張ってください。

nophoto
通りすがり
2016年12月13日11:46

なるほど!!
大変勉強になりました!ありがとうございます!(^O^)

はい、精一杯楽しんで行こうと思います!
宅

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索